第2回:エージェントの思考回路:ReAct(Reasoning and Acting)プロセスの深掘り

こんばんは、斎藤です。

前回の第1回では、AIエージェントが「自律的に目標を達成する存在」であることを学びました。

では、具体的にどうすればAIに「自律的な判断」をさせることができるのでしょうか。

その鍵を握るのが、現在のAIエージェント設計の核心である「ReAct(リアクト)」フレームワークです。

今回は、AIが賢い判断を下すための「脳」の仕組みを解き明かします。

それでは見ていきましょう!

🥇 導入:AIに「独り言」を言わせると賢くなる?

AIに複雑な指示を出したとき、いきなり間違った答えを出されて困ったことはありませんか?

それはAIが「考えながら動く」というプロセスを飛ばしているからです。

ReAct(Reasoning and Acting)は、AIに「次に何をすべきか」を独り言のように推論させ、その考えに基づいて行動させる手法です。

このフレームワークを理解することで、AIの回答精度は劇的に向上します。


🥈 本編

1. ReActフレームワークの3つのステップ

ReActを導入したエージェントは、常に以下の3つのステップをループ(反復)しながらゴールを目指します。

  1. Thought(思考):「現在の状況はこうだ。次は〇〇を調べる必要がある」とAI自身が論理的に推論する。
  2. Action(行動):推論に基づいて、実際にツール(Web検索や計算など)を動かす。
  3. Observation(観察):実行結果を読み取り、「目標にどこまで近づいたか」を客観的に評価する。

この「考えてから動く」プロセスを繰り返すことで、AIは複雑な指示に対しても着実に成果へ近づいていきます。

2. なぜ「思考」を言語化させる必要があるのか?

人間が難しい数学の問題を解くとき、頭の中だけで考えず計算用紙に途中式を書きますよね。

AIも同じです。

「思考プロセスを外に出させる(言語化する)」ことで、AIの推論能力は飛躍的に向上します。

このプロセスを挟むことで、AIは「今知っていること」と「まだ調べるべきこと」を明確に区別できるようになり、情報の抜け漏れが激減します。

3. 【実践】ReActプロンプトの基本構造

エージェントを動かすプロンプトには、以下の形式を指定することが一般的です。これによりAIの挙動を完全に制御できます。

プロンプトの構成例:
Thought: (ここに現在の状況と次の計画を書く)
Action: (実行するツール名)
Observation: (ツールの実行結果をここに反映する)
… (目標達成まで繰り返し)
Final Answer: (最終的な回答)


🥉 まとめと次への展望

✨ 「論理の積み上げ」が自律性を生む

ReActは、AIに「行き当たりばったりな行動」をさせないための道標です。

思考と行動を分離し、一歩ずつ観察結果を積み上げていくこの手法こそが、信頼できるAIエージェントの土台となります。

これを知ることで、万が一AIが間違えたときも「どの思考段階で狂ったのか」を特定し、修正することが可能になります。

⏩ 次回予告:第3回

エージェントの「脳」の仕組みがわかったところで、次は「手」の使い方を学びましょう。

「第3回:Function Calling(関数呼び出し)の極意:AIに『手』を与える技術」

AIが外部ツールを自在に操り、情報の取得だけでなく「操作」まで行うための具体的な連携術を徹底解説します。お楽しみに!