第3回:RAG実践:コンテキストとプロンプトの論理的結合技術

こんばんは、斎藤です。

第1回で「RAGの全体像」を、第2回で「最適なデータの探し方(検索)」を学びました。

今回は、見つけた情報をいかにしてAIの回答に組み込むか、という「拡張(Augmented)」の工程、つまりコンテキストとプロンプトの融合技術に切り込みます。

それでは見ていきましょう!

🥇 導入:「ただ情報を渡すだけ」では不十分な理由

RAGにおいて、検索によって最高精度の「情報(チャンク)」が手に入ったとしても、それをそのままプロンプトに貼り付けるだけでは、AIの回答精度は頭打ちになります。

AIは、膨大な情報の中から「どの部分を優先すべきか」「検索結果をどう解釈すべきか」という論理的なガイドを必要としているからです。

情報の密度が高まれば高まるほど、プロンプトには「検索結果」と「本来の命令」を明確に区別し、矛盾なく統合する高度な設計が求められます。

この記事を読めば、以下の「論理的結合」のスキルが身につきます。

  1. 検索結果をAIが迷わず処理するための「コンテキスト・ラベリング」
  2. 情報が矛盾した際の「優先順位指定プロンプト」
  3. 引用(ソース)を明示させ、回答の証拠能力を高めるテクニック

検索した情報を、AIの「知能」に最適なかたちで流し込む、プロンプトエンジニアリングの真髄を解説します。


🥈 本編

1. 検索結果を構造化する「コンテキスト・ラベリング」

検索によって得られた複数のチャンクを、AIがひと塊の「雑音」としてではなく、独立した「事実」として認識させるための手法です。

💡 XMLタグやデリミタの活用

複数の情報を渡す際は、<context>タグや###などのデリミタを使用して情報をカプセル化します。

これにより、AIは「どこまでが参考資料で、どこからが自分のタスクか」を瞬時に理解します。

プロンプト例:
「以下の提供された資料[資料1〜3]に基づいて回答してください。資料以外の推測は一切排除してください。
<資料1> {チャンク内容1} </資料1>
<資料2> {チャンク内容2} </資料2>」

2. コンテキスト優先順位の定義(Knowledge Override)

検索結果の中に、AIがもともと持っている古い知識と矛盾する情報が含まれている場合、AIに「どちらを信じるべきか」を明示する必要があります。

  • 命令の追加: 「あなたの学習データよりも、提供されたコンテキストの内容を優先してください。」
  • 不明時の挙動指定: 「コンテキストに答えが含まれていない場合は、無理に回答せず『資料に記載なし』と述べてください。」

この設定により、ハルシネーション(嘘)を防ぎ、常に最新かつ特定のデータに基づいた出力を維持できます。

3. ソースの明示とインライン引用の強制

回答の末尾に「参考文献:〇〇」と書くだけでは不十分です。回答のどの部分がどの資料に基づいているかを明示させることで、情報の証拠能力を最大化します。

💡 引用プロンプトの設計

AIに対し、「回答の各文の末尾に、参照した資料番号を[1]の形式で付与せよ」と指示します。

これにより、ユーザー(読者)は情報の正誤を即座に検証できるようになり、ブログ記事の信頼性(E-E-A-T)が飛躍的に向上します。


🥉 まとめと次への展望

✨ 結合技術が「信頼できるAI」の最後の壁を壊す

検索結果をプロンプトへと論理的に統合する技術は、AIを単なる「チャットボット」から、信頼に足る「専門家・リサーチャー」へと進化させるラストピースです。

情報を構造化し、優先順位をつけ、引用を徹底させる。この手間こそが、他者の追随を許さない高品質なAIコンテンツを生みます。

⏩ 次回予告:第4回(完結編)

RAGシリーズの締めくくりとなる次回は、いよいよ「生成(Generation)」の最終局面です。

「RAG実践:どう出力させるか?出力形式制御と検証プロンプトの応用」と題し、構造化データ(JSON)での出力や、出力された回答が本当にコンテキストに基づいているかをAI自身に再チェックさせる「自己検証プロンプト」の技術を徹底解説します。

シリーズの集大成、どうぞお見逃しなく!