こんばんは、斎藤です。
今回は、RAGワークフローの最初の、そして最も重要なステップである「検索(Retrieval)」の精度を最大化する技術に焦点を当てます。
AIに最高の「カンニングペーパー」を見つけさせるための、データ側の処理(チャンク)と、AI側の検索指示(プロンプト)の両方を戦略的に設計する手法を解説します。
それでは見ていきましょう!
目次
🥇 導入:検索ステップの重要性:ゴミデータからはゴミの回答しか生まれない
RAGワークフローの品質は、AIが外部データベースから「何を」「どれだけ正確に」探し出せるか、という検索(Retrieval)ステップの精度によって9割が決まります。
どんなに高性能なLLMを使ったとしても、検索ステップで質問に無関係な情報や、不正確な情報(ゴミデータ)が引っ張られてきてしまえば、結果として生成される回答も不正確になってしまいます(Garbage In, Garbage Out)。
AIに最高の「カンニングペーパー」を見つけさせるためには、単に質問を投げるだけでなく、データ側の処理(チャンク)と、AI側の検索指示(プロンプト)の両方を戦略的に設計する必要があります。
この記事を読めば、RAGの検索精度を飛躍的に向上させるための具体的な手法を習得できます。
- RAGにおける「チャンク(Chunk)」の役割と、最適なチャンクサイズの決め方
- 検索精度を最大化するためのプロンプト(質問)設計技術
- 検索結果の質を評価・改善する実践的なアプローチ
RAGシステムの心臓部ともいえる「検索」の技術をマスターし、信頼できるAIワークフローを構築しましょう!
🥈 本編
1. RAG成功の鍵「チャンク(Chunk)」戦略
RAGが参照するデータベース(文書やデータ)は、LLMが一度に処理できるトークン数(コンテキストウィンドウ)を超えていることがほとんどです。
そのため、データを意味のある小さな塊に分割する必要があります。この塊をチャンク(Chunk)と呼びます。
① チャンクとは何か
- 定義: 長大な文書を意味が途切れないように分割した、小さな情報単位。
- 目的: 質問と関連性の高い部分だけを効率よく検索し、LLMに渡すため。
② 最適なチャンクサイズの設計
チャンクサイズがRAGの性能に最も影響を与えます。
- 小さすぎる場合: 質問の答えが複数のチャンクに分散し、AIが完全なコンテキストを得られなくなる(回答漏れ)。
- 大きすぎる場合: 無関係な情報まで含まれ、AIが本当に必要な情報を見つけにくくなる(ノイズ増加)。
💡 実践的なチャンクサイズ:
ブログ記事やマニュアルの場合、500〜1,000トークンを目安とし、区切りは「段落」「セクション」「H2/H3見出し」など、意味的な境界を用いるのが鉄則です。
2. 検索精度を最大化するプロンプト(質問)設計
RAGの検索エンジンに対して、AIがユーザーの意図を正確に伝え、適切なチャンクを引っ張るためのプロンプト設計技術です。
① クエリ書き換え(Query Rewriting)
ユーザーの曖昧な質問(例:「あのRAGのやつどうやるんだっけ?」)を、検索に適した具体的で専門的なキーワードを含む質問(例:「RAGのチャンク戦略における最適なトークン数は?」)にAI自身に書き換えさせます。
② 質問の具体化とコンテキスト付与
検索プロンプトには、単なるキーワードだけでなく、「いつの情報が必要か」「誰の視点が必要か」といったコンテキストを含めることで、検索対象を絞り込みます。
❌ 悪い検索プロンプト:
SEOの最新トレンド
⭕ 良い検索プロンプト:2025年Q4における日本の医療系アフィリエイトブログに特化したSEOの最新トレンド
3. RAG検索結果の質を評価・改善するアプローチ
RAGを実運用する上で、検索結果の質を常に検証し、改善していくことが不可欠です。
① 評価指標:検索の再現率と適合率
- 再現率(Recall): データベース内の正解情報のうち、どれだけを検索で拾えたか。
- 適合率(Precision): 検索で拾ってきた情報のうち、どれだけが質問に対して正解だったか。
この二つのバランスを取るために、検索結果を人間がレビューし、「この質問なら、このチャンクは必要だ/不要だ」というフィードバックをシステムに学習させる(フィードバックループ)ことが、RAGの性能を向上させます。
🥉 まとめと次への展望
✨ RAGの成功は「データ処理」と「検索指示」で決まる
今回の核は、「AIが参照するデータ(チャンク)を最適化すること」と「AIによる検索(クエリ)を最適化すること」の二点です。
このRAGの最初のステップを徹底的に磨き込むことで、あなたのAIワークフローはハルシネーションとは無縁の、信頼できるシステムへと進化します。
⏩ 次回予告:第3回
RAGが適切なチャンクを見つけられたら、次のステップは「拡張(Augmented)」です。
「RAG実践:コンテキストとプロンプトの論理的結合技術」と題し、検索で得られた情報をLLMが最も効果的に利用できるように、プロンプトのどこに、どのような形式で組み込むべきか、その具体的なテクニックを解説します。
どうぞご期待ください!
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