第1章 「ここまででいい」を自分で決める
前回、
「もっと稼ぎたい。」
「もっと学びたい。」
「もっと成長したい。」
という、「もっと」に終わりがないことについて考えました。
一つ目標を達成しても、また次の目標が現れる。
収入が増えても、もっと欲しくなる。
知識が増えても、まだ足りないと感じる。
周りの人が成長していれば、自分ももっと頑張らなければと思う。
そうやって、「まだ足りない。」という感覚のまま、毎日を過ごしてしまうことがあります。
では、なぜ「もっと」は終わらないのでしょうか。
その理由の一つは、自分にとっての「ここまででいい」を決めていないからです。
「これくらいあれば十分。」
「ここまでできれば十分。」
「このくらいの生活が、自分にはちょうどいい。」
そういう基準を持っていなければ、いつまでも上を目指すことになります。
もちろん、上を目指すこと自体が悪いわけではありません。
もっと良い仕事をしたい。
もっと収入を増やしたい。
もっと知識を身につけたい。
もっと自由になりたい。
そう思うことは、自然なことです。
ただ、「もっと」を目指すことと、「もっと必要だ」と思い続けることは違います。
ここを分けて考える必要があります。
例えば、年収500万円を目指していた人が、目標を達成したとします。
普通なら、「これで少し安心できる。」と思ってもいいはずです。
ところが、周りを見ると年収600万円の人がいる。
SNSを見ると、年収1000万円の人もいる。
さらに、「年収1000万円を達成しました。」という投稿を見れば、「自分も、もっと稼がなければ。」と思ってしまう。
そして、500万円を達成したことより、「まだ1000万円に届いていない。」ことのほうが気になってくる。
これは、お金だけではありません。
仕事でも、「この仕事ができるようになった。」と思ったら、「次はこの資格を取ろう。」「もっと難しい仕事をしよう。」「もっと評価されなければ。」と、次の目標を探してしまう。
勉強でも、「このくらい分かれば十分。」と思う前に、「まだ知らないことがある。」と、さらに情報を集めてしまう。
SNSでも、「これくらい発信できれば十分。」ではなく、「もっとフォロワーを増やさなければ。」「もっと反応を増やさなければ。」と考えてしまう。
こうして、自分で決めたはずの人生なのに、いつの間にか、「周りがどこまで進んでいるか」が、自分の基準になってしまいます。
ここで、一度考えてみてください。
あなたにとって、「ここまであれば十分。」と言えるものは、いくつあるでしょうか。
どれくらいの収入があれば、安心して生活できるのか。
どれくらい働けば、自分の生活とのバランスが取れるのか。
どれくらい学べば、実際に行動へ移せるのか。
どれくらいの人間関係があれば、十分に満たされるのか。
どれくらいの物があれば、快適に暮らせるのか。
こうしたことを、自分の言葉で決めたことがある人は、意外と少ないかもしれません。
なぜなら、「もっと必要だ。」という情報は、毎日のように入ってくるからです。
もっと稼いだほうがいい。
もっと勉強したほうがいい。
もっと努力したほうがいい。
もっと挑戦したほうがいい。
もっと良いものを持ったほうがいい。
もっと人脈を増やしたほうがいい。
世の中には、「今のままでは足りない。」と思わせる情報がたくさんあります。
それが悪いわけではありません。
誰かにとっては、本当に必要なことかもしれません。
でも、誰かにとって必要なものが、自分にも必要とは限りません。
例えば、毎日忙しく働いて、収入を増やすことを目指す人もいます。
一方で、収入はそこそこでいいから、自由な時間を増やしたい人もいます。
たくさんの知識を身につけたい人もいれば、必要なことだけ知って、すぐに行動したい人もいる。
たくさんの人と交流したい人もいれば、少人数の大切な人との時間を守りたい人もいる。
どちらが正しいという話ではありません。
大切なのは、「自分は、どちらを大切にしたいのか。」を、自分で決めることです。
「ここまででいい。」と決めることは、「これ以上は成長しない。」という意味ではありません。
「これ以上は頑張らない。」という意味でもありません。
今の自分にとって、「ここから先は、本当に必要なのか。」を考えるための基準です。
必要なら、また増やせばいい。
もっと挑戦したくなったら、進めばいい。
環境が変わったら、基準を変えてもいい。
「十分」は、一度決めたら一生変えてはいけないものではありません。
むしろ、「ここまででいい。」という基準を持っているからこそ、「それ以上を本当に望んでいるのか。」を、自分で考えられるようになります。
周りがやっているからではなく、自分が必要だからやる。
誰かが持っているからではなく、自分が欲しいから手に入れる。
世の中が「もっと」と言っているからではなく、自分の人生に必要だから進む。
その状態をつくることが、自分の人生を自分で選ぶということなのだと思います。
SINGLESELFが大切にしている「引き算」は、何でも減らして、何も求めないという考え方ではありません。
必要なものと、必要以上のものを分けることです。
そして、「ここまででいい。」と決められるものを決めていく。
そうすると、今まで「足りない」と思っていたものの中に、実はもう十分に持っていたものが見えてくるかもしれません。
次の章では、その「十分」を、もっと具体的に考えてみます。
お金。
仕事。
時間。
学び。
人間関係。
そして、自分が本当に大切にしたいもの。
「もっと」ではなく、「自分にとって、ここまであれば十分。」その基準を、自分の人生の中につくっていきましょう。
第2章 「十分」は、数字だけでは決められない
「ここまででいい。」という基準を、自分で決める。
そう聞くと、「じゃあ、具体的にいくらあればいいのか。」「どれくらい働けばいいのか。」「どこまで成長すればいいのか。」と、数字で答えを出したくなるかもしれません。
もちろん、数字は一つの目安になります。
でも、自分にとっての「十分」は、数字だけでは決められません。
なぜなら、同じ年収でも、同じ働き方でも、同じ生活でも、人によって感じ方が違うからです。
大切なのは、数字そのものではなく、その数字によって、自分がどんな生活を送りたいのか。ということです。
例えば、お金について考えてみます。
「年収をもっと増やしたい。」そう思うのは自然なことです。
でも、収入が増えれば増えるほど、必ず幸せになるとは限りません。
収入を増やすために仕事が増え、自由な時間が減る。
その結果、家族との時間や、自分の好きなことに使える時間まで減ってしまうことがあります。
それでも「もっと稼がなければ。」と考え続けてしまうのです。
ここで一度、「自分は、何のためにお金を増やしたいのだろう。」と考えてみることが大切です。
生活を安定させたいのか。
将来の不安を減らしたいのか。
好きな場所で暮らしたいのか。
家族との時間を増やしたいのか。
やりたい仕事を選べるようになりたいのか。
目的が分かれば、「ただ収入を増やすこと」と「自分に必要なお金をつくること」は、同じではないと気づきます。
例えば、今の生活を安心して続けられるだけの収入があり、それ以上のお金を増やすために、毎日何時間も自由な時間を失っているとします。
そのとき、「もっと稼ぐこと」が本当に必要なのか。
それとも、「今ある収入を維持しながら、時間を取り戻すこと」のほうが、自分にとって価値があるのか。
考えてみる余地があります。
「十分」を決めるというのは、お金を増やすことを諦めるのではなく、お金と時間のどちらを、どこまで大切にしたいのかを自分で決めることです。
これは、仕事についても同じです。
仕事が好きなら、もっと働いてもいい。
もっと責任のある仕事に挑戦してもいい。
もっと成果を出したいと思ってもいい。
ただ、「どこまで働けば、自分にとって十分なのか。」を考えずに働き続けると、仕事には終わりがなくなります。
もっと成果を出す。
もっと評価される。
もっと重要な仕事を任される。
もっと昇進する。
そうやって、次から次へと目標が生まれていきます。
その結果、「仕事は頑張っているのに、人生が自分のものではない。」という状態になることもあります。
だから、「どこまで働くか。」だけではなく、「仕事以外に、どんな時間を残したいか。」も考えてみる。
仕事を頑張ることと、自分の人生を大切にすることは、必ずしも反対ではありません。
仕事に使う時間を自分で決めることで、家族との時間や、趣味の時間、何もしない時間を守ることもできます。
そして、何もしない時間も、決して無駄ではありません。
予定を入れない。
仕事をしない。
情報を見ない。
ただゆっくり過ごす。
そういう時間があるからこそ、自分が本当にやりたいことを考えられることがあります。
だから、「一日をどれだけ埋められるか。」ではなく、「どれくらい余白があれば、自分らしくいられるか。」という基準を持ってもいいのです。
学びについても、同じことが言えます。
今は、学ぼうと思えばいくらでも学べます。
本があります。
動画があります。
SNSがあります。
オンライン講座があります。
AIもあります。
少し検索するだけで、いくらでも新しい情報が出てきます。
これは便利なことです。
でも、便利だからこそ、「まだ知らない。」という状態から抜け出せなくなることがあります。
一つのことを学んだら、次の情報が気になる。
新しい方法を知ったら、もっと効率の良い方法を探す。
別の人のやり方を見つけたら、今までの方法が間違っているように感じる。
そうすると、学ぶことが目的になり、いつまで経っても行動に移せなくなります。
だからこそ、「ここまで分かったら、一度やってみる。」という「十分」を決めることも大切です。
100点の知識を身につけてから始めるのではなく、今の自分に必要なところまで学んだら、実際にやってみる。
そこで分からないことが出てきたら、また学べばいい。
この繰り返しのほうが、知識だけを増やし続けるより、自分の人生に活かせることがあります。
そして、「十分」を決めるときに、もう一つ大切なのが、「他人から見て十分か」ではなく、「自分にとって十分か」を考えることです。
年収1000万円を超えている人を見れば、それが十分に見えるかもしれません。
毎日何冊も本を読んでいる人を見れば、自分ももっと勉強しなければと思うかもしれません。
たくさんのフォロワーがいる人を見れば、自分ももっと発信しなければと思うかもしれません。
でも、その人には、その人の生活があります。
自分には、自分の生活があります。
持っている時間も違います。
大切にしたいものも違います。
目指している人生も違います。
だから、他人の「十分」を、そのまま自分の「十分」にする必要はありません。
誰かにとっての100点が、自分にとっての100点とは限らないのです。
ここで、一度紙に書き出してみてもいいかもしれません。
「今の生活で、これ以上増やさなくてもいいものは何だろう。」
「今の自分に、本当に必要なものは何だろう。」
「これ以上増やすより、守りたいものは何だろう。」
こうやって考えていくと、「もっと欲しい。」と思っていたものの中に、実は「誰かが持っているから欲しかっただけ。」というものが見つかるかもしれません。
反対に、「これは、もっと大切にしたい。」と思えるものも見えてくるかもしれません。
それが、自分にとっての「十分」を考えるということです。
十分とは、「これ以上はいらない。」と人生を小さくするための言葉ではありません。
「これ以上を求める前に、今あるものを大切にしよう。」という、自分自身への確認でもあります。
そして、環境が変われば、「十分」も変わっていい。
家族が増えれば、必要なものも変わるかもしれません。
仕事が変われば、必要な収入や時間も変わるかもしれません。
やりたいことが見つかれば、新しいものを求めることもあるでしょう。
だから、「一度決めたから、もう増やしてはいけない。」と考える必要はありません。
そのときの自分にとって、「ここまであれば十分。」と思える基準を持っておく。
そして、必要になったら、また見直す。
そのくらい柔軟でいいのです。
大切なのは、周りに合わせて「もっと」を繰り返すのではなく、自分にとって必要なものを、自分で判断できることです。
次の章では、その「十分」を決めるうえで、特に大きな影響を与えているものについて考えていきます。
それは、「他人の成功」です。
SNSを開けば、誰かの収入や実績、暮らし、成長が見えてきます。
その姿を見ているうちに、「自分も、もっと頑張らなければ。」と思ってしまう。
でも、他人の人生を基準にして、自分の「十分」を決める必要はありません。
自分にとって本当に必要なものは何なのか。
その問いを、次の章でもう一度考えてみましょう。
第3章 他人の成功を、自分の「十分」にしない
自分にとっての「十分」を考えるとき、意外と難しいのが、他人の存在です。
自分では「これくらいで十分」と思っていたのに、誰かの生活を見ると、急に自分のものが足りなく感じることがあります。
SNSを開けば、誰かの収入や仕事の実績、楽しそうな生活が目に入ってくる。
そのたびに、「自分ももっと頑張らなければ。」と思ってしまうことがあります。
もちろん、誰かの成功を見ること自体が悪いわけではありません。
刺激を受けることもありますし、「自分もやってみたい。」と思えることもあります。
問題なのは、他人の成功を見た瞬間に、それを自分に必要なものだと思ってしまうことです。
例えば、SNSで「月収100万円を達成しました。」という投稿を見たとします。
その人がどれだけ努力したのかを知れば、素直にすごいと思うかもしれません。
自分も頑張ろうと思うこともあるでしょう。
でも、そこで「自分も月収100万円を達成しなければ、自分はまだ足りない。」と考える必要はありません。
その人にとって必要だった金額と、自分に必要な金額は違います。
その人が大切にしている生活と、自分が大切にしたい生活も違います。
使える時間も、家族との関係も、仕事に対する考え方も違います。
それなのに、結果だけを見て、自分の基準まで同じにする必要はないのです。
これは、収入だけではありません。
フォロワーの数もそうです。
資格の数もそうです。
持っている物もそうです。
旅行した回数や、住んでいる場所、働いている会社、役職なども同じです。
誰かが持っているものを見ていると、それがいつの間にか「自分にも必要なもの」に見えてくることがあります。
でも、ここで一度考えてみてください。
「それは、本当に自分が欲しいものだろうか。」
それとも、「誰かが持っているから、自分も欲しくなっただけ」なのでしょうか。
この二つは、似ているようで大きく違います。
自分が本当に欲しいものであれば、そこに向かって努力することには意味があります。
でも、誰かと比べたことで生まれた「もっと」なら、手に入れたとしても、また次の比較が始まるかもしれません。
例えば、フォロワーが1000人になったら満足できると思っていたのに、1000人を達成すると、今度は5000人が気になる。
5000人になれば、1万人が気になる。
1万人になれば、さらに大きなアカウントと比べてしまう。
こうなると、数字が増えているのに、気持ちはいつまでも「足りない」のです。
これは、前回考えた「もっと」と同じ構造です。
目標が悪いのではありません。
問題は、自分の「十分」を持たないまま、他人の基準を追い続けることです。
だから、誰かの成功を見たときに、すぐ自分と比べなくてもいいのです。
「すごいな。」と思って終わってもいい。
「自分もやってみたい。」と思ったなら、そこから自分の目標に変えてもいい。
でも、「あの人ができているから、自分もできなければいけない。」と考える必要はありません。
他人の成功は、自分を否定する材料ではありません。
自分の可能性を考えるための参考にしてもいいものです。
大切なのは、「他人の結果」と「自分の価値」を一緒にしないことです。
誰かが先に進んでいるからといって、自分が遅れているとは限りません。
誰かが大きな成果を出しているからといって、自分の積み重ねに価値がないわけでもありません。
人生には、それぞれのタイミングがあります。
仕事を優先する時期もあれば、家族を優先する時期もある。
挑戦する時期もあれば、立ち止まる時期もあります。
だから、「今の自分は、どこにいるのか。」を見ることが大切です。
昨日の自分より少し前に進んでいるか。
自分が大切にしたいものを守れているか。
無理をしすぎず、自分の生活を続けられているか。
そういう基準で自分を見ることができれば、他人の成功に振り回されにくくなります。
そして、ここで大切なのが、「十分」と「成長」を対立させないことです。
「十分だと思ったら、成長をやめなければいけない。」と考える必要はありません。
今の生活に満足しながら、もっと挑戦することもできます。
今あるものを大切にしながら、新しいものを求めることもできます。
例えば、「今の収入で生活は十分できている。」と思いながら、もっと仕事の幅を広げたいと考えてもいい。
「今の知識でも行動できる。」と思いながら、さらに学びたいと思ってもいい。
「今の人間関係で十分幸せだ。」と思いながら、新しい人との出会いを楽しんでもいい。
つまり、「十分」とは、成長を止めるための線ではありません。
「足りないから増やす」のではなく、「自分が望むから増やす」ための基準です。
この違いは、とても大きいものです。
「足りない」と思っていると、不安から行動します。
「もっと持たなければ。」という焦りから、仕事や勉強を増やしてしまう。
でも、「今でも十分だけれど、これをやってみたい。」と思えれば、もっと自由に選べます。
そこには、他人との比較ではなく、自分の意思があります。
誰かに追いつくためではなく、自分が進みたいから進む。
誰かに認めてもらうためではなく、自分がやってみたいからやる。
その状態になれば、「もっと」は自分を苦しめる言葉ではなくなります。
SINGLESELFが大切にしている「引き算」も、ここにつながっています。
情報を減らす。
比較を減らす。
人間関係を減らす。
必要以上の仕事を減らす。
そして、「他人と比べて足りない」という感覚も、少しずつ減らしていく。
そうすると、今まで見えなかったものが見えてきます。
すでに持っている経験。
これまで積み重ねてきた知識。
自分を支えてくれる人。
自分が自由に使える時間。
そして、これまで頑張ってきた自分自身です。
「もっと」を考える前に、「もう持っているもの」を見てみる。
それだけでも、自分の人生に対する見方は変わっていきます。
他人の成功は、参考にしてもいい。
刺激を受けてもいい。
そこから新しい目標をつくってもいい。
でも、他人の「十分」を、自分の「十分」にする必要はありません。
自分にとって何が必要なのか。
自分は何を大切にしたいのか。
そして、どこまであれば十分なのか。
その答えは、他人ではなく、自分で決めていいのです。
次の章では、さらに一歩進んで、「足りないもの」ではなく、「残したいもの」に目を向けてみます。
もっと増やすことを考えるのではなく、今の人生に何を残したいのか。
その視点を持つことで、「十分」という基準が、より自分らしいものになっていきます。
第4章 「足りないもの」ではなく「残したいもの」を考える
ここまで、
自分にとっての「十分」を決めることについて考えてきました。
他人の成功を自分の基準にしないことも、その一つです。
周りを見れば、上にはいくらでも人がいます。
もっと稼いでいる人もいれば、もっと知識を持っている人もいる。
もっと多くの人に知られている人もいれば、もっと自由に生きているように見える人もいます。
そうしたものを見続けていると、
「自分には何が足りないんだろう。」
と考えるようになります。
収入が足りない。
知識が足りない。
経験が足りない。
時間が足りない。
人脈が足りない。
そうやって「足りないもの」を一つずつ探していくと、人生には次々と新しい課題が生まれてきます。
もちろん、
足りないものを見つけることが悪いわけではありません。
必要なものがあるなら、それを補うことも大切です。
ただ、
「足りないもの」だけを見ていると、今すでに持っているものが見えなくなることがあります。
そして、気づかないうちに「もっと足さなければ」という考え方に戻ってしまいます。
だから、
ここで一度、問いを変えてみてください。
「自分には何が足りないんだろう。」
ではなく、
「自分は、何を残したいんだろう。」
この問いに変えるだけで、見えるものが少し変わってきます。
例えば、
お金について考えてみます。
「もっと収入を増やしたい。」
と考えるだけでは、どこまで増やせばいいのか分かりません。
でも、「家族との時間を守りながら、安心して暮らせる生活を残したい。」と考えれば、必要なお金の意味が変わってきます。
仕事についても同じです。
「もっと仕事ができるようになりたい。」
「もっと大きな仕事を任されたい。」
と考えることはできます。
でも、
「仕事だけで一日が終わる生活にはしたくない。」
「自分で考える時間を残したい。」
という気持ちがあるなら、仕事を増やすことだけが正解ではありません。
時間もそうです。
予定を増やせば、充実しているように感じるかもしれません。
新しいことを始めれば、成長しているように感じるかもしれません。
でも、
一人で何も考えずに過ごす時間や、好きなことをする時間がなくなってしまったら、何のために頑張っているのか分からなくなることもあります。
だから、
「何を増やすか」だけではなく、
「何を失いたくないか」を考えてみる。
その視点が、
自分にとっての「十分」を考えるときに大切になります。
人間関係も同じです。
知り合いを増やすこと。
人脈を広げること。
たくさんの人とつながること。
それだけが、人間関係を豊かにする方法ではありません。
安心して話せる人。
無理をしなくても一緒にいられる人。
何も話さなくても自然でいられる人。
そういう関係を残したいのであれば、すべての付き合いを増やす必要はないのです。
これは、
SINGLESELFの「引き算」という考え方にもつながっています。
引き算は、何でも減らせばいいという話ではありません。
大切なのは、減らしたあとに何を残すのかです。
予定を減らす。
情報を減らす。
人間関係を少し整理する。
仕事のやり方をシンプルにする。
そうして生まれた余白に、
本当に残したいものを置いていく。
そこまで考えて初めて、
「引き算」には意味が生まれます。
例えば、
毎日たくさんの情報を集めているとします。
新しい本を読む。
動画を見る。
SNSを見る。
ニュースを確認する。
AIの新しい情報を調べる。
それ自体は悪いことではありません。
でも、情報を増やし続けることで、実際に行動する時間がなくなっているなら、一度減らしてみてもいい。
「もっと知らなければ。」
ではなく、
「今の自分には、ここまで分かっていれば十分。」
と決める。
そのうえで、
実際に使ってみる。
必要になったら、また調べればいいのです。
「十分」を決めるというのは、
自分の可能性を小さくすることではありません。
むしろ、
本当に大切なものに集中するために、必要以上のものを追いかけないということです。
全部を持とうとしない。
全部を知ろうとしない。
全部を経験しようとしない。
その代わり、
自分が残したいものには、ちゃんと時間を使う。
ここで、
一度考えてみてください。
今の生活の中で、
「これ以上増えなくてもいいもの」は何でしょうか。
そして、
「これだけは失いたくない」と思うものは何でしょうか。
家族との時間かもしれません。
一人で過ごす時間かもしれません。
好きな仕事かもしれません。
健康かもしれません。
自分で考える自由かもしれません。
人によって、
残したいものは違います。
だからこそ、
他人の「十分」をそのまま借りる必要はありません。
誰かにとって必要な収入が、
自分にも必要とは限らない。
誰かにとって理想的な働き方が、
自分にとって心地いいとは限らない。
自分にとって何が大切なのかを考えるからこそ、
必要なものと、必要以上のものを分けられるようになります。
「もっと」をやめる必要はありません。
成長したいなら、
成長していい。
収入を増やしたいなら、
増やしていい。
新しいことを学びたいなら、
学んでいい。
ただ、
その先にあるものを一度考えてみる。
「それによって、自分は何を残したいのだろう。」
この問いがあるだけで、
「もっと」の方向が少し変わります。
ただ増やすために増やすのではなく、
大切なものを守るために増やす。
ただ成長するために成長するのではなく、
自分が望む生活をつくるために成長する。
そう考えれば、
「十分」と「成長」は対立しません。
十分とは、
「もう何もいらない」ということではありません。
「これ以上を求める前に、今ある大切なものをちゃんと見ておこう。」
ということです。
そして、
その大切なものを残すために必要なものだけを選んでいく。
それが、
SINGLESELFの考える「十分」です。
足りないものを探し続けると、
人生はいつまでも完成しません。
でも、
残したいものを決めると、
今の生活の中にも「十分」が見えてきます。
次の章では、
「すでに持っているもの」にもう一度目を向けてみます。
足りないものを探す前に、
これまで自分が積み上げてきたものを見直してみましょう。
第5章 持っているものを、もう一度見てみる
ここまで、
自分にとっての「十分」を決めることについて考えてきました。
他人の成功を基準にせず、「何を残したいのか」という視点を持つことも大切です。
それでも、
ふとした瞬間に「まだ足りない」と感じることがあります。
もっとお金が必要かもしれない。
もっと知識が必要かもしれない。
もっと経験を積まなければいけない。
そう思ったときに、
一度だけ立ち止まってみてください。
「足りないもの」ではなく、「すでに持っているもの」を見てみるのです。
私たちは、
これから手に入れたいものについては、よく考えます。
欲しいものを調べたり、必要な知識を集めたり、次の目標を決めたりする。
でも、
これまで自分が積み上げてきたものについては、意外と見落としています。
できるようになったことも、乗り越えてきたことも、いつの間にか当たり前になっているからです。
例えば、
仕事を始めたばかりの頃にはできなかったことが、今は自然にできるかもしれません。
以前なら時間がかかっていた作業を、今では短時間で終わらせられるかもしれない。
人との付き合い方も、
昔より少し上手になっているかもしれません。
失敗した経験があるからこそ、同じことを繰り返さなくなっていることもあるでしょう。
知識も同じです。
一年前には分からなかったことを、
今は当たり前のように理解している。
何度も失敗したことで、何をすると上手くいかないのかを知っている。
こうしたものは、
数字には表れにくいものです。
銀行口座の残高のように、目に見える形で増えていくわけでもありません。
でも、
確実に自分の中に残っています。
SINGLESELFでは、
こうしたものも「資産」として考えることができます。
知識。
経験。
技術。
信用。
人とのつながり。
失敗から学んだこと。
すぐにお金になるものばかりではありません。
それでも、未来の自分が使えるものとして残っていきます。
だから、
「何も持っていない」と思ったときほど、一度振り返ってみてください。
これまで何を覚えてきただろう。
どんな経験をしてきただろう。
どんな失敗を乗り越えてきただろう。
誰から信用してもらえるようになっただろう。
そう考えていくと、
自分では気づいていなかったものが見つかるかもしれません。
例えば、
ブログを始めたばかりの頃には、文章を書くことさえ大変だったかもしれません。
でも、何本も記事を書いていくうちに、少しずつ文章の構成が分かってくる。
読者がどんなところで離れるのか。
どんな言葉に反応するのか。
どんなテーマなら自分が書き続けられるのか。
そうしたことが、
少しずつ分かるようになります。
それは、
単なる「記事を書いた」という結果ではありません。
次の記事を書くときに使える経験として、残っていきます。
だからこそ、
「まだ何もできていない」と決めつけなくてもいいのです。
もちろん、
これから学ぶこともあります。
これから挑戦することもあります。
でも、
これまでの自分をゼロにして、これからを始める必要はありません。
すでに持っているものを土台にして、次へ進めばいいのです。
これは、
「もっと」を否定する話ではありません。
もっと学びたい。
もっと稼ぎたい。
もっと成長したい。
そう思うことは、
自然なことです。
ただ、
その気持ちの裏側に「今の自分では足りない」という思いが隠れていないか、一度考えてみてほしいのです。
今の自分が足りないから、
もっと増やす。
そう考えると、
どれだけ増やしても満足できなくなります。
一方で、
「今の自分にも、すでに持っているものがある。」
と認めたうえで、必要なものを増やしていく。
この二つでは、
同じ「成長」でも意味が変わります。
前者は、
足りない自分を埋めるための成長です。
後者は、
すでにあるものを育てるための成長です。
SINGLESELFが大切にしたいのは、
後者の考え方です。
だから、
何かを始める前に「何が足りないか」だけを考えなくてもいい。
「自分は、もう何を持っているだろう。」
と考えてみる。
文章を書く力がある。
人に話を聞く力がある。
一つのことを長く続けてきた経験がある。
仕事で身につけた知識がある。
小さなものでも構いません。
それらを組み合わせることで、新しいものをつくれることがあります。
そして、
「十分」を決めることは、持っているものに気づくことでもあります。
今の収入で、
必要な生活ができている。
今の仕事で、
大切にしたい時間を確保できている。
今の人間関係の中に、
安心できる人がいる。
今までの経験の中に、
これから使えるものがある。
そう気づけたら、
「もっと、もっと」と追いかけ続けなくてもよくなるかもしれません。
もちろん、
人によって「十分」の基準は違います。
今より収入を増やしたい人もいるでしょう。
新しい仕事に挑戦したい人もいるでしょう。
それでいいのです。
大切なのは、
他人から見て十分かどうかではありません。
自分にとって、本当に必要なものが足りているかどうかです。
だから、
「まだ足りない」と感じたときには、すぐに何かを足す前に、一度振り返ってみてください。
今、自分は何を持っているだろう。
何ができるようになっただろう。
どんな経験が、自分の中に残っているだろう。
そして、
「これ以上増やさなくても、十分大切なものはあるだろうか。」
と考えてみる。
もしかすると、
今まで「足りない」と思っていたものの中には、すでに自分の中にあるものもあるかもしれません。
ただ、
それを見ていなかっただけかもしれません。
だから、
何かを足す前に、もう一度見る。
持っているものを見る。
積み上げてきたものを見る。
残したいものを見る。
そこから、
本当に必要なものだけを選んでいけばいいのです。
人生を豊かにするために、
いつも何かを増やし続ける必要はありません。
すでに持っているものに気づき、
大切なものを残し、
必要なものだけを少しずつ増やしていく。
そのくらいのペースでも、
人生はちゃんと前に進んでいきます。
「もっと」を追いかけるのではなく、
「十分」を知る。
足りないものを探し続けるのではなく、
持っているものに気づく。
そして、
自分にとって大切なものを残していく。
それが、
今回のシリーズで考えてきた「十分を決める」ということです。
次回は、
ここまで考えてきた「十分」を、実際の生活の中でどう使っていくのかを考えていきます。
仕事も、お金も、時間も、人間関係も、すべてを増やす必要はありません。
自分にとっての「ここまででいい」を決めることで、人生には少しずつ余白が生まれていきます。
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